仕事・出勤前の腹痛を和らげ、過敏性腸症候群を予防する腸内フローラ

仕事・出勤・登校前の腹痛を和らげ、過敏性腸症候群を予防するための腸内フローラ改善方法について述べています。

過敏性腸症候群の症状を緩和、予防するための腸内フローラ改善方法とは?

仕事・出勤・登校前の急な腹痛を防ぎ、過敏性腸症候群を予防していくには、腸内細菌のバランスを整えて腸内フローラを改善していくことが大切です。

その腸内フローラを改善するための方法としては、乳酸菌・食物繊維オリゴ糖など、腸内環境や腸内細菌にとって良い働きをする栄養成分を日頃から摂るようにすることが挙げられます。

生きた乳酸菌やビフィズス菌など体に良い働きをする有用菌が含まれている食品のことは「プロバイオティクス」と呼ばれます。

また難消化性の食物繊維オリゴ糖といった腸内細菌のエサになる栄養成分が含まれた食品は「プレバイオティクス」と呼ばれています。

これらの食品は腸内環境に送り込むことで腸内細菌のうちの善玉菌を増やしてくれます。

過敏性腸症候群を予防する腸内フローラ

プロバイオティクスによる腸内フローラ改善方法

「プロバイオティクス」とは乳酸菌などカラダにとって有用な菌が含まれた食品のことですが、腸内環境を良くすることで有名な「乳酸菌」とは、腸内で善玉菌として働く乳酸桿菌やビフィズス菌などの総称のことです。

そしてこの乳酸菌には、乳酸や酢酸を生み出して腸を正常な酸性に保つ働きがあります。

もし、腸が酸性に保たれなければ、病気をもたらす細菌やウイルスが死滅せず、体内に侵入しやすくなったり、悪玉菌が増殖しやすくなったりするとされています。

そのため、腸内環境は常に乳酸菌の働きによって酸性に保たれなければならないのです。

ちなみに生きた乳酸菌であっても、食品から摂取した場合、やがて体外に排出されてしまいます。

その理由は、幼少の頃からすでに出来上がっている腸内フローラに新しい菌が定着するのは難しいからです。

しかし、乳酸桿菌やビフィズス菌は生きたまま腸に届くと、3~7日は乳酸や酢酸をせっせと生み出してくれるため、乳酸菌を日頃から摂るようにすることは腸内フローラを良好に保つのに効果的です。

また、この「プロバイオティクス」は腸管の炎症を抑制したり、腸の粘膜のバリア機能を高めたりするのに役立ちます。

「プロバイオティクス」によって腸内フローラを改善する場合は、普段から乳酸菌が含まれた納豆や漬け物、ぬか漬けなどの日本伝統の発酵食品やヨーグルトなどを食べるようにすることが大切です。

その際、乳酸菌の多くは胃酸にやられてしまいますが、死菌になっても善玉菌のエサになるとされているため、腸内環境の改善のためにはこれらの食品は有効です。

また生きた菌を一度にたくさん腸まで届けたい場合は、サプリメントを利用することもおすすめです。

プレバイオティクスによる腸内フローラ改善方法

「プレバイオティクス」による腸内フローラの改善も、腸内細菌のバランスを整えて過敏性腸症候群を予防するために効果的な方法です。

「プレバイオティクス」とは腸内細菌の善玉菌のエサになる成分、特に、消化酵素によって分解されないで大腸にまで届く「食物繊維」や「オリゴ糖」が含まれた食品のことです。

タンパク質や脂質などの栄養素は、胃液や膵液に含まれる消化酵素によって分解され、小腸で吸収されますが、食物繊維オリゴ糖のような一部の炭水化物は小腸で吸収されずに、腸に止まり続けるので、腸内に生息する腸内細菌のエサになることができるのです。

特に食物繊維は腸内細菌のエサになる以外にも、腸に溜まった有毒物を吸着して一緒に排出したり、腸の健康のために非常に良い働きをする「短鎖脂肪酸」を生み出すもとになったりするので、腸内フローラのバランスを整えるために非常に重要な存在だといえます。

ちなみに食物繊維には水に溶けやすい水溶性と、水に溶けにくい不溶性のものがあり、どちらか一方を偏って摂るのではなく、このふたつをバランス良く摂ることが腸内フローラの改善には大切です。

 

・水溶性食物繊維が豊富に含まれている主な食材

わかめ、昆布、モズク、寒天、らっきょう、雑穀、ごぼう、イチゴ、アボガド、納豆、切り干し大根など。

・不溶性食物繊維が豊富に含まれている主な食材

ごぼう、さつまいも、玄米、雑穀、チアシード、アボガド、大豆、納豆、切り干し大根、干ししいたけ、アーモンド、くるみ、落花生など。

 

またオリゴ糖はヒト特有の善玉菌であるビフィズス菌を増やす働きがあるため、腸内細菌のバランスを整えるために重要な役割を果たします。

オリゴ糖はタマネギやハチミツなどに多く含まれていますが、スーパーなどでオリゴ糖だけのものが販売されていますので、悪玉菌が好む砂糖の代わりにオリゴ糖を使うようにすることは、善玉菌を増やして腸内フローラを改善するのに有効です。

腸内フローラ改善で大切なのは全体のバランスを整えること

このように、腸内細菌のバランスを整えて腸内フローラを改善し、過敏性腸症候群を予防していくには、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」の両方が大切になってきます。

また腸内フローラを改善していく際に必要なことは、特定の菌の働きにこだわりすぎるよりも、腸内フローラの多様性を大切にすることだと思われます。

これまでは腸内細菌は善玉菌・悪玉菌・日和見菌に分類されてきましたが、悪玉菌を含めたそれぞれの菌が、私たちの健康を保つために、それぞれの役割を果たしていることが、近年の解析技術の発達によって分かってきています。

そのため、仕事・出勤・登校前の急な腹痛の緩和や過敏性腸症候群の予防に大切なのは腸内細菌の調和を保つことを意識して、腸内フローラの改善を行うことだと考えられるのです。

 

参考文献
上野川修一 『からだの中の外界 腸のふしぎ』 講談社
光岡知足 『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社
松生恒夫 『腸に悪い14の習慣 「これ」をやめれば腸が若返る』 PHP研究所
辨野義己 『腸を整えれば病気にならない 腸内フローラで健康寿命が延びる』 廣済堂出版
藤田紘一郎 『脳はバカ、腸はかしこい』 三五館
内藤裕二 『消化管は泣いています 腸内フローラが体を変える、脳を活かす』 ダイヤモンド社
福田真嗣 『おなかの調子がよくなる本 自分でできる腸内フローラ改善法』 KKベストセラーズ